キュレーション 後期
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後期(2014年9月-12月) レクチャー一覧
https://www.a-i-t.net/mad/2014/core/curation
【権力と資本、そしてアートの不/可能性】
・モダン(近代)と正しい芸術の語り方
9月2日(火)19:00-21:00
18世紀のおわりに原型が形づくられた近代の美術館。
それは、それが属する国などの共同体の目的に照らし合わせて「正しい」とされるモノを集め、展示、公開、収蔵しながら、「正しい」とされる歴史を綴り、「正しい」人々を生み出してゆきます。
この歴史化という作業は、選ぶと同時に排除することにほかなりません。私たちが馴染んでいる「歴史」というものの見方の表裏に目を配りながら、近代の美術館とアートの関係を考えます。
・地域社会と芸術祭の行方
9月16日(火)19:00-21:00
越後妻有アートトリエンナーレ、ヨコハマトリエンナーレ、あいちトリエンナーレ、瀬戸内芸術祭など、近年芸術祭は各地で開催されるようになりました。
では、なぜこの十数年でこれほどまでに増えたのでしょうか?
サービス産業や知識産業がシェアを伸ばすなか、アートは観光や地域創造といった経験を生む経済と寄り添う傾向にあるといってもいいでしょう。
地域社会の豊かさと過酷さの振れ幅のなかでこの時代を照らし出す芸術祭という空間を考えます。
・新自由主義と国際展 - 経済から見るアートの場の変容
10月7日(火)19:00-21:00
1970年代から加速した新自由主義という資本主義の体制とアートの関係を、国際展をキーワードに読み解きます。経済市場とはひと味違う価値を提示することがあるアートも、資本主義というエンジンがなければ人から人、また場から場へと伝えることはできません。
しかしながら、アートは、やはり経済の波に呑まれてしまうのでしょうか。
それとも、それに抵抗をしながら、新たな価値を私たちに伝えてくれるのでしょうか。
世界最大のアートフェア、アート・バーゼルとヴェネツィア・ビエンナーレなどの国際展の関係を眺めながら、経済とアートについて考えます。
・人とモノと場の関係が作品になる? - 関係性の美学再考
10月21日(火)19:00-21:00
1990年代にフランスの批評家ニコラ・ブリオーによって書かれた
『関係性の美学』。人やモノ、サービスの関係自体を美学の対象に、
鑑賞者の参加によって成立する作品あるいは社会空間のルールに
介入する作品などを積極的に評価し、欧米の美大ではバイブル的な本となりました。
人とモノとサービスの、一見あり得そうもない結びつきは、
私たちに鑑賞者にどのような働きかけをするのでしょうか?
社会変革をキーワードに関係性の美学を考えます。
・イデオロギーとキュレーション - 権力と展覧会の危うい関係
11月4日(火)19:00-21:00
20世紀の二つの世界大戦のあいだでおこった展覧会から、国家権力と展覧会の関係を読み解きます。
国などの共同体と展覧会の関係がある極端な方向に振れる戦争という非常事態。
そこでは、言論や思想の統制が行われますが、展覧会もそのための装置として機能しました。ナチスドイツが企画した『退廃芸術』展(1937年)や『大ドイツ芸術』展(1937年)、また太平洋戦争中に日本が仕掛けた展覧会などを例に挙げながら、共同体のプロパガンダとして機能する展覧会について考えます。
【実験とユートピア】
・彫刻からインスタレーション
11月18日(火)19:00-21:00
よく、空間芸術といわれるインスタレーション。
彫刻とその違いを考えるには、作られたモノだけではなく、設置されたモノどうし、またそれらと展示空間の関係に目を配る必要がありそうです。
モノから関係への移り変わりとそれが表す社会の変化について、19世紀フランスのロダンや「台座」から彫刻を降ろした戦後のアルベルト・ジャコメッティ、ロバート・モリス、ライアン・ガンダーなどの作品、またアメリカの美術史家ロザリンド・クラウスなどの考えを参照しながら考えます。
・ハラルド・ゼーマン考 - エキシビション・メーカーの父
11月25日(火)19:00-21:00
自らを、キュレーターではなく「エキシビション・メーカー」と呼んだハラルド・ゼーマン。
フリーランス・キュレーターの先駆けとなったゼーマンの、時代を見抜く力と行動力、自由な思考から、展覧会とは何かを考えます。
昨年のヴェネツィア・ビエンナーレに合わせて再制作展が開催された「態度がかたちになるとき」展(1969年)、あるいは「ドクメンタ5」(1972年)など、ヨーゼフ・ボイスやウォルター・デ・マリアなどのアーティストがさまざまな実験を繰り返した展覧会から眺めはじめます。
・キュレーションが辿った道 - 展覧会の変容と20・21世紀のアート
12月2日(火)19:00-21:00
絵画や彫刻、写真、映像、インスタレーション、ランド・アート、パフォーマンス、
コンセプチュアル・アートなどの表現形式、時代性や社会文化的背景、資本、
目的の関係によって、複雑かつ多様化するキュレーション。
戦後、展覧会づくりはどのように変化していったのでしょうか。
美術館に所属しながらキュレーションの限界に挑んだポンタス・フルテンやヤン・フート、またモノがない展覧会を企画したルーシー・リパード、さらにアール・ブリュットや神秘主義なども射程に入れたマッシミリアーノ・ジオーニなどの仕事に触れながら、キュレーションを考えます。
・二つの世界大戦とアートの変容 - 近代国家の成熟とアヴァンギャルド
12月3日(水)19:00-21:00
はじめた頃の騎馬隊も、終わりの頃には戦闘機に変わっていたほどの技術革新を成し遂げながら、複数の国のどうしが総力戦を展開するという、それまでの「戦争」を超えた戦争であった第一次世界大戦。
人類史上はじめて現れた社会状況に、アーティストたちはどのように立ち向かったのでしょうか?
クルト・シュヴィッターズ、ルードヴィッヒ・キルヒナー、エミール・ノルデなどの思考や表現、活動をとおして、20世紀前半のヨーロッパで見られた非理性的な空間の表象を考えます。
・絵画に残された道とは? - メディアの特性と強度を探る
12月16日(火)19:00-21:00
写真や映像、コンピュータなどのデジタル技術によって、絵画はますますその存在意義を問われるようになっています。
それはつまり、表現手段がより多様になるなかで、なぜそれでも絵画でなければならないのかという問いがつねにあるということです。
ジャクソン・ポロックやゲルハルト・リヒター、ピーター・ドイグ、フェデリコ・エレーロなど、戦後のペインターによる作品を取り上げながら、21世紀の来るべき絵画の存在論を考えます。